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一夜の愛、人との愛
第5章 白亜の建物
(やっぱり、天使なんだ…)
その涼しげで高貴な容姿に、改めて魅入られる真理亜に気づいたか、男がチラリと視線を向ける。
が、わずかに睫毛を伏せて絡みかけた視線を解くと、天使は階下から戻ってきた細身の男に頷いた。
細身の男が片手を空中で動かすと、ザレムが大仰な溜息をつきながら、階段へと足を向けた。
だが、そこで振り返る。
何となく、動きを視線で追いかけていた真理亜をよそに、ザレムは白い麗人を静かに睨んだ。
「そこの女は、俺のもんだからな」
低い声で一言告げると、目を丸くする真理亜には目もくれず、階段の奥へ消えていく。
(・・・・・・は?)
階段を降りていく足音が聞こえなくなると、まだ驚き固まっていた真理亜に、やっと天使が微笑んだ。
「マリアさん。申し訳ありません。だいぶ、振り回してしまいましたね」
「え」
「貴方の安全を再優先に確保したくて、色々な理解を省いたまま、お連れしてしまいました。ひとまず、私の部屋へ行きましょう」
長身の男は、真理亜の背中を包むように腕を回し、上へ続く階段へ促す。
そこで、彼女の右足に視線が触れた。
「あぁ」
ストッキングが破れ、乾いた血が砂利と共にこびりついた右膝の傷が見える。
すっかり忘れていたが、思い出すと、今更、ツキンツキンと痛む気がする。
男が静かに体の向きを変えて、彼女に微笑んだ。
「掴まって」
言葉と共に、男は真理亜を横抱きに抱え上げると、翼を大きく開いた。
その涼しげで高貴な容姿に、改めて魅入られる真理亜に気づいたか、男がチラリと視線を向ける。
が、わずかに睫毛を伏せて絡みかけた視線を解くと、天使は階下から戻ってきた細身の男に頷いた。
細身の男が片手を空中で動かすと、ザレムが大仰な溜息をつきながら、階段へと足を向けた。
だが、そこで振り返る。
何となく、動きを視線で追いかけていた真理亜をよそに、ザレムは白い麗人を静かに睨んだ。
「そこの女は、俺のもんだからな」
低い声で一言告げると、目を丸くする真理亜には目もくれず、階段の奥へ消えていく。
(・・・・・・は?)
階段を降りていく足音が聞こえなくなると、まだ驚き固まっていた真理亜に、やっと天使が微笑んだ。
「マリアさん。申し訳ありません。だいぶ、振り回してしまいましたね」
「え」
「貴方の安全を再優先に確保したくて、色々な理解を省いたまま、お連れしてしまいました。ひとまず、私の部屋へ行きましょう」
長身の男は、真理亜の背中を包むように腕を回し、上へ続く階段へ促す。
そこで、彼女の右足に視線が触れた。
「あぁ」
ストッキングが破れ、乾いた血が砂利と共にこびりついた右膝の傷が見える。
すっかり忘れていたが、思い出すと、今更、ツキンツキンと痛む気がする。
男が静かに体の向きを変えて、彼女に微笑んだ。
「掴まって」
言葉と共に、男は真理亜を横抱きに抱え上げると、翼を大きく開いた。