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一夜の愛、人との愛
第5章 白亜の建物
少年の頭を撫でたい衝動を抑えながら、真理亜は相手の隣、手すりに左肘を乗せて寄りかかった。
「あの人が逃げたって、それ、コーラルも言ってた」
「んー」
逡巡するような間が合ってから、少年が、ふわりと体を持ち上げると、真理亜に向き合うように手すりをまたいで座る。
「俺も、何やったかまでは知らないんだけど。”穢れ”になったから、忘れろって天使長様に言われた。それから暫くして、兄貴が逃げたから誰かが探しに行かなきゃならなくなった、ってとこまでは噂で聞いてた」
「そうなんだ。・・・でも、忘れろなんて、難しいよね」
「うん・・・」
俯いたチェイスの目元を赤茶色のくるくるとした髪が隠す。
「”穢れ”は、消される定めだから」
「え」
「本当は”穢れ”は消滅させる運命なんだけど、兄貴は幽閉の予定だったんだ。なのに、逃げ出したもんだから、天使長様がすげー怒ったみたいで・・・」
少年が潜めた声で告げると、真理亜に顔を寄せる。
「俺は、ザレムが逃げ切れる方に賭けてたんだ。きっと逃げ切って、いつか戻ってくる、ってさ」
チェイスの声は、自分に言い聞かせるように明るかったけれど、背中の羽は、どことなく寂しげに閉じている。
「ねぇ、チェイス」
「何!?」
真理亜の呼びかけに、はっとして見つめてくる少年は、何だか嬉しい事があった子犬のようだ。
(可愛い)
密かに頬を緩めながらも、真理亜は、ふと気になったことを尋ねた。
「あの人、どこにいるの?」
「あの人が逃げたって、それ、コーラルも言ってた」
「んー」
逡巡するような間が合ってから、少年が、ふわりと体を持ち上げると、真理亜に向き合うように手すりをまたいで座る。
「俺も、何やったかまでは知らないんだけど。”穢れ”になったから、忘れろって天使長様に言われた。それから暫くして、兄貴が逃げたから誰かが探しに行かなきゃならなくなった、ってとこまでは噂で聞いてた」
「そうなんだ。・・・でも、忘れろなんて、難しいよね」
「うん・・・」
俯いたチェイスの目元を赤茶色のくるくるとした髪が隠す。
「”穢れ”は、消される定めだから」
「え」
「本当は”穢れ”は消滅させる運命なんだけど、兄貴は幽閉の予定だったんだ。なのに、逃げ出したもんだから、天使長様がすげー怒ったみたいで・・・」
少年が潜めた声で告げると、真理亜に顔を寄せる。
「俺は、ザレムが逃げ切れる方に賭けてたんだ。きっと逃げ切って、いつか戻ってくる、ってさ」
チェイスの声は、自分に言い聞かせるように明るかったけれど、背中の羽は、どことなく寂しげに閉じている。
「ねぇ、チェイス」
「何!?」
真理亜の呼びかけに、はっとして見つめてくる少年は、何だか嬉しい事があった子犬のようだ。
(可愛い)
密かに頬を緩めながらも、真理亜は、ふと気になったことを尋ねた。
「あの人、どこにいるの?」