この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
一夜の愛、人との愛
第5章 白亜の建物

握手の手を握ったまま、彼はテラスに座り足をブラつかせる。
「にしても、人間の声って、本当にすげー綺麗なんだな」
「声?」
「人間の声にも惹かれるって習ってたけど、やっぱ本物は凄いや」
(習ってた?)
怪訝そうに瞬く真理亜に、少年は足を揺らしたまま、つまらなさそうに視線を斜め上に向けた。
横長の建物の中、ちょうど泉があったところから天に伸びる塔の切っ先あたりを見ている。
「ザレムがいたらな~。楽しめるのに」
むくれて肩を落とすと、少年の背中の翼も、心なしか萎む。
だが、真理亜は彼の口から出た名前にはっとした。
「ザレム? それって、あの、黒い人!?」
「!?」
真理亜が驚いて尋ねると、急に握っていた手を離し、少年はテラスから空中に飛び退いた。
白い翼が柔らかくしなっている。
「なんで知ってんの?」
静かだが、警戒心に満ちた声に、真理亜が行き場を失った右手を胸元に寄せた。
「あの人と、一緒に、来たから」
「へ? ほんとに?」
真理亜が首を縦に振ると、少年が再びテラスに寄りそう。
手すりを挟んで向かい合い、少年は真理亜の背格好を改めて上から下まで見た。
「まぁ、・・・それなら、いいけど。じゃあ、兄貴と、んー」
「真理亜」
「兄貴とマリアは、知り合い、って奴?」
「そう」
「へぇー」
何だか、とても感心された。少年は腕を組んで、したり顔で頷いている。
少年の顔色がコロコロ変わるので、真理亜も少し笑う余裕が出てくる。
「知り合いじゃ、だめ?」
「ん? いや、そんなことないけど。なんか、本当に逃げたんだなーって」
今度は、少し悲しげな顔になるとに、手すりに顎を乗せている。
器用な少年だ。
「にしても、人間の声って、本当にすげー綺麗なんだな」
「声?」
「人間の声にも惹かれるって習ってたけど、やっぱ本物は凄いや」
(習ってた?)
怪訝そうに瞬く真理亜に、少年は足を揺らしたまま、つまらなさそうに視線を斜め上に向けた。
横長の建物の中、ちょうど泉があったところから天に伸びる塔の切っ先あたりを見ている。
「ザレムがいたらな~。楽しめるのに」
むくれて肩を落とすと、少年の背中の翼も、心なしか萎む。
だが、真理亜は彼の口から出た名前にはっとした。
「ザレム? それって、あの、黒い人!?」
「!?」
真理亜が驚いて尋ねると、急に握っていた手を離し、少年はテラスから空中に飛び退いた。
白い翼が柔らかくしなっている。
「なんで知ってんの?」
静かだが、警戒心に満ちた声に、真理亜が行き場を失った右手を胸元に寄せた。
「あの人と、一緒に、来たから」
「へ? ほんとに?」
真理亜が首を縦に振ると、少年が再びテラスに寄りそう。
手すりを挟んで向かい合い、少年は真理亜の背格好を改めて上から下まで見た。
「まぁ、・・・それなら、いいけど。じゃあ、兄貴と、んー」
「真理亜」
「兄貴とマリアは、知り合い、って奴?」
「そう」
「へぇー」
何だか、とても感心された。少年は腕を組んで、したり顔で頷いている。
少年の顔色がコロコロ変わるので、真理亜も少し笑う余裕が出てくる。
「知り合いじゃ、だめ?」
「ん? いや、そんなことないけど。なんか、本当に逃げたんだなーって」
今度は、少し悲しげな顔になるとに、手すりに顎を乗せている。
器用な少年だ。

