この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
白雪姫にくちづけを
第20章 海
ザァーン…
『なにあれ…』
梨々子達より沖にいた浩巳とあずさは、ポカンとその様子を眺めている。
彼らはそれぞれ、一人用の浮き輪をつけて沖で浮かんでいた。
『あ…はは//ラブラブだねー。』
浩巳の言葉に あずさが答えると、彼は『はぁ』とため息をついた。
(変なやつばっか…。あんな大人が人前でイチャついて恥ずかしくないのか。)
『ほんとに25歳かよ…』
『でも、彼のおかげで海来れたんだよ?』
“彼のおかげ”という言葉には、色々な意味が含まれている。ここまで、車で運転して連れてきてくれたこと以外にも、彼はあずさ達の為にしてくれたことがあった。
学生同士で海へ泊りに行くことを話した時、浩巳の母は反対した。
───「行かせてあげたいけど、学生だけでは許してあげられないわ。水難事故も多い時期だし…せめて日帰りにしなさい。」
梨々子づてにその話を聞いた翔平は旅行前、浩巳の母に会いにきてくれたのだった。
───「危険な遊びはしないように、私が責任を持って管理します。節度を守って、夜は23時までには就寝させますし、親御さんへ連絡を入れるよう促します。」
仕事帰りだったのだろう、スーツ姿で現れた彼は名刺を差し出し、礼儀正しく名乗ってから、母にそんな話をしてくれた。
───「まぁ、ご丁寧にありがとうございます。あなたのような方が一緒なら、こちらも安心です。ご面倒おかけしますが、よろしくお願いします。」
浩巳の母にも好印象だったようで、すぐさま了承が得られた。成人した付添いがいることと、彼の人柄に後押しされて、無事にあずさ達にお許しが出たのだった。
『見るからに好青年だもんね…』
(まさか、りっちゃんの彼氏が社会人だったなんて驚いたけど…)
梨々子達に目を向ける あずさに浩巳は水鉄砲をかました。
『っきゃ!な、何?!』
『よそ見しすぎ。』
ムッとした視線の浩巳に、あずさは水面を払う。
バシャッ!
『ふふ、ヤキモチやき!』
『………。』
ピュ!
バシャ!
バシャバシャ!バシャシャ!…
『見て翔平。あずさ達、子供みたーい。』
『ははは、仲良しだね。』
海水に浮かぶ恋人達は、それぞれに楽しい時間を過ごしていた。