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白雪姫にくちづけを
第20章 海


ザァーン…


『なにあれ…』


梨々子達より沖にいた浩巳とあずさは、ポカンとその様子を眺めている。


彼らはそれぞれ、一人用の浮き輪をつけて沖で浮かんでいた。


『あ…はは//ラブラブだねー。』


浩巳の言葉に あずさが答えると、彼は『はぁ』とため息をついた。


(変なやつばっか…。あんな大人が人前でイチャついて恥ずかしくないのか。)


『ほんとに25歳かよ…』


『でも、彼のおかげで海来れたんだよ?』


“彼のおかげ”という言葉には、色々な意味が含まれている。ここまで、車で運転して連れてきてくれたこと以外にも、彼はあずさ達の為にしてくれたことがあった。


学生同士で海へ泊りに行くことを話した時、浩巳の母は反対した。


───「行かせてあげたいけど、学生だけでは許してあげられないわ。水難事故も多い時期だし…せめて日帰りにしなさい。」


梨々子づてにその話を聞いた翔平は旅行前、浩巳の母に会いにきてくれたのだった。


───「危険な遊びはしないように、私が責任を持って管理します。節度を守って、夜は23時までには就寝させますし、親御さんへ連絡を入れるよう促します。」


仕事帰りだったのだろう、スーツ姿で現れた彼は名刺を差し出し、礼儀正しく名乗ってから、母にそんな話をしてくれた。


───「まぁ、ご丁寧にありがとうございます。あなたのような方が一緒なら、こちらも安心です。ご面倒おかけしますが、よろしくお願いします。」


浩巳の母にも好印象だったようで、すぐさま了承が得られた。成人した付添いがいることと、彼の人柄に後押しされて、無事にあずさ達にお許しが出たのだった。


『見るからに好青年だもんね…』


(まさか、りっちゃんの彼氏が社会人だったなんて驚いたけど…)


梨々子達に目を向ける あずさに浩巳は水鉄砲をかました。


『っきゃ!な、何?!』


『よそ見しすぎ。』


ムッとした視線の浩巳に、あずさは水面を払う。


バシャッ!


『ふふ、ヤキモチやき!』


『………。』


ピュ!


バシャ!


バシャバシャ!バシャシャ!…






『見て翔平。あずさ達、子供みたーい。』


『ははは、仲良しだね。』


海水に浮かぶ恋人達は、それぞれに楽しい時間を過ごしていた。



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