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白雪姫にくちづけを
第20章 海
ザザーン…
『カズヤくん、今日はありがとう。』
パラソルの下で涼んでいた芽衣が、隣に座ったカズヤにぽつりと話しかけた。
『ん?何が?』
海からあがったばかりの彼は、タオルで顔を拭きながら、耳だけ傾ける。
『あたし、男の友達って特にいなくて…彼氏もいないから、この旅行の話になった時、困ってたんだ。
誘えるの、カズヤくんしか思いつかなくて…』
『おー、そんなの気にすんなよ!』
カズヤは人懐こい笑顔でニカッと笑う。
『…でも、本当は嫌だったでしょ。』
『?』
『…カズヤくん、あずさちゃんのこと好きだよね?』
『!!』
芽衣のストレートな質問に、カズヤはピタリと動きを止めた。
『安心して。あの2人には言ってないよ…梨々子ちゃんもあずさちゃんも、全然気づいてなさそうだから。』
『…まいったな//まぁ…当たり。』
カズヤは頭を掻きながら答える。
『彼氏といる所なんか、見たくないよね。なのに、付き合わせてごめんね…』
芽衣は申し訳なさそうにカズヤを見上げた。
海ではしゃぐあずさ達に目線を向けたまま、カズヤは自嘲ぎみに笑う。
『いいんだ。ちょうどいい機会だと思ったし。おれも諦めたかったから。』
そこでようやく、2人は目を合わせた。
芽衣に笑顔を見せるカズヤは、穏やかに続ける。
『…おれさ、弟いるんだ。高1の。』
『…うん?』
『ちょうど反抗期ってゆーか、ちょっと生意気な感じなんだけど、浩巳くん見てるとカブるとこあって…
憎めないんだよな、浩巳くん。
…まぁ、浩巳くんからは大分嫌われてるみたいなんだけど!』
後ろに手をついて、あぐらをかくカズヤに、芽衣は優しく微笑んだ。
『カズヤくんて…イィ男だね。』
『お。今ごろ気づいたの?惚れてもいーよ?』
『あはは、興味ないや!』
『おい!∑ヾ( ー̀дー́ )』
『めーい!こっち来てー!』
『今行くー!』
手を振る梨々子に返事をし、芽衣は立ちあがった。
カズヤも水を一口飲んで、よしっ!と立ちあがる。
『サンキュ、芽衣。話したらちょっとスッキリしたわ。…行こーぜ。』