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白雪姫にくちづけを
第20章 海
バッシャーン!!
『ぶっぶはぁ!!』
『りりちゃん、ほら捕まって。』
『ゴホッ…はぁ…アハハハ!』
バナナボートの揺れは半端なかった。
(ど、どこが手加減気味なのっ…!)
前列の芽衣とあずさは、ボートが弾く水面のしぶきを顔面に受けて、息もできないほど苦しかった。
時折、誰かが落ちるとボートは止まるのだが、もう、乗っている間は前さえ見えなかった。
『梨々子、楽しくなってきた?』
『アハハハ!面白いね!』
最初は怖がっていた梨々子も、慣れてきて楽しんでいるようだ。
落ちる率は梨々子が一番多いものの、彼女が落ちれば、必ず翔平が泳いで救出に向かっていた。
それも、梨々子を安心させた一つの要因かも知れない。
『あずさ、楽しい?』
『な、なんかよく分かんないけどっ…きゃぁぁ!』
浩巳に気を取られている間に、ボートは動き出した。
油断していたあずさは、振り落とされそうになる。
『きゃぁあ…!』
『うぉぉお…!』
彼女の身体を支えようと思わず片手を差し出す浩巳だったが、激しすぎる揺れに耐え切れるはずもなく…
ザッパァァァン!!
2人は派手に飛んでいった。
『んぶっ!』
『ぶはっ!』
宙を舞ったかと思った瞬間、目の前は水中で、飲み込んだ海水で鼻が痛い。
『大丈夫かー?』
『あずさーすごい飛んだね〜』
手を振るボートの人影に目をやっていると、隣で笑い声が聞こえた。
『はは…げぼっはははは!』
ずぶ濡れで笑う浩巳。
彼がこんなに声をあげて笑った所はあまり見たことがなかった。
(よかった…浩巳も、少しは楽しんでくれてるんだよね。)
『あずさ、髪ボサボサ!はははは!』
(な、何か違う…//)
『もう!//』
今朝、梨々子がまとめてくれた彼女のおだんご頭は、激震のせいで、ひどいことになっている。
とはいえ、無邪気な笑顔を見せる彼の姿に、あずさは嬉しさを滲ませながらボートへ戻った。
…その仲睦まじい2人の様子は、やはりカズヤの胸をチクリと刺すのだった。