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白雪姫にくちづけを
第21章 敵わない相手
『楽しかったねー!』
ボートを乗り終えた後、パラソルの下で顔を拭きながら梨々子が笑う。
『芽衣ちゃんは一回も落ちなかったね。』
『最っ高に面白かった!』
彼女達は、つかの間の休憩を楽しんでいる。
『おばちゃーん、かき氷6つね!味は…どうしようか?』
『イチゴでいいんじゃないですか?』
『なんだよー安易な!せっかくだから、全部変えようぜ!』
『じゃあ任せます。』
素っ気なく答える浩巳に、カズヤは話しかける。
『浩巳くんさ。』
『遠藤です。』
『おれのこと、そんなに嫌いか?』
『…別に。』
『あずさとはただの友達だからな?』
『…知ってます。』
『…………
けど…可愛いよな、あずさは。』
『……。』
『共通の友達も多いけどさ、あずさはフツーに、男からの人気高いよ。』
『何が言いたいんですか。』
『おれだけに攻撃してきたって、大学にはまだまだ敵がいるぞって話。』
『はいお待ち!シロップはかけ放題だよ!』
受け取ったかき氷を抱えて、2人は歩く。
『おれだけを目の敵にすんなよ。…それとも、あずさをおぶったこと、妬いてんのか?』
『──!?』
浩巳は急に立ち止まった。
『何て言ったんですか…?』
『…やっぱりあの時の人影、浩巳くんだったんだな…』
2人の間に、険悪な空気が流れる。
カズヤの言う人影とは。
あずさと付き合う前、バイト帰りの彼女に声を掛けようとした浩巳のことだ。
当時、あずさに近づく浩巳を不審者と勘違いしたカズヤは、彼女を助けるため、急に声をかけた。
驚いて腰を抜かした彼女を、カズヤは部屋までおぶって送り届けた経緯があった。