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白雪姫にくちづけを
第21章 敵わない相手
『あの時は気のせいだと思ったけど…後々、浩巳くんを見かけるようになって何となく…そうじゃないかって思ってた。』
『…あれは、おれが悪かったんで。』
カズヤのかつての行動に腹を立てていた浩巳だったが、彼は言葉を飲み込む。
『逃げてばっかりだな、浩巳くんは。』
カズヤのかけた言葉に、浩巳は目の色を変えた。
『別に妬くことは恥ずかしいことじゃないだろ。気に入らないなら、そう言えばいい。
あずさが大事なくせに、変な意地張るなよな。』
ピンと張り詰めた空気。
しばらくの沈黙の後、それを破ったのは浩巳だった。
『…和宮さん。』
『お、おう!』
『かき氷溶けてます。』
『お?!おわ…!』
2人は無言でパラソルの元へ走った。
『あ、来た来た。かき氷組おっそーい!』
翔平の買ってきた焼きそばやパンなどで昼食を済ませた女性陣に、野次を飛ばされながら 2人はかき氷を配る。
『あずさ、どれにする?』
先に彼女に声をかけたのは、カズヤだった。
『うーんと、じゃあ…』
『はい。』
伸ばした彼女の手には、浩巳の差し出したかき氷が渡された。
『あのな…浩巳くんさぁ…』
『ウチはレモン!』
『あたし抹茶ね!』
ため息をついた次の瞬間には…カズヤの手には、自分のブルーハワイのみが残されていた。
『ありがと。あたし、みぞれが一番好きなの。』
あずさは隣に腰を降ろす浩巳に、笑みをこぼす。
『……。』
『…浩巳?』
『ん、あぁ…かき氷はイチゴが一番だと思うけどね。』
『えぇ?ふふ…』
あずさの笑顔を見ながら、浩巳はカズヤの言葉を思い出していた。
───「逃げてばっかりだな」───
(確かに…あいつの言う通りかも知れない。)
あずさに好意を寄せる男性へは多かれ少なかれ敵意を覚える。
けれども、何かする訳ではない。
カズヤの挑発にも、真っ向から受け答えするより、衝突を避ける方法をとった。
(あいつが悪い人じゃないことくらい…本当は分かってる。それでも仲良くなんか…したくないって思うのは、おれがガキってことなのか?)
ピンク色の池に溶けていく氷の山を、浩巳はしかめっ面で眺めていた。