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白雪姫にくちづけを
第21章 敵わない相手
周囲から賞賛の拍手が送られる中、翔平が歩いてくる。
『翔平!』
梨々子が彼に駆け寄った。
『大丈夫?!大丈夫なの?!』
『うん、おれは何とも。』
笑ってみせる翔平に安心した梨々子は、ぎゅっと彼にしがみついた。
『翔平、勇敢だったよ!びっくりして心臓が止まるかと思ったけど…でも、すごく素敵だった!』
『はは…うん、ありがとう。』
抱き合う2人を少し遠巻きに眺める4人。
誰も、安易に言葉をかけることができなかった。
『あ、ビックリさせてごめんね。
おれ、ライフセーバーの資格、持ってるんだよ。』
みんなの強張った緊張をほぐすように、彼は柔らかく笑った。
『ライフセーバー…そ、そうだったんだ…』
『あ、ちなみに今のはお手本にならないから…みんな、真似しちゃダメだよ?』
翔平曰く、人命救助は、救助する側の安全が第一だという。
最善は、一緒に溺れてしまうことを防ぐために、水に入らないのが鉄則だとか。
『ロープつきの浮き輪を投げるとか、ボートで救助するとか…何せ、道具は必ず必要だ。』
『どうしても水に入るなら、浮く道具がいる。
おれがやったみたいに、上手く相手の背後から浮き輪で救えるのがベストだけど、溺れてる人はパニックだから。背後に回るのは難しい。その前にこっちが掴まれて溺れる可能性があるからね。』
『とにかく、専門家に任せるのが一番だから。』
全員に注意を促したところで、翔平はバレーの片付けを始めた。
『さてと。そろそろみんな、お腹空いたよね?
バーベキューにしようか。』
にこやかに言う彼に、みな歓喜の声をあげる。
彼らを縛っていた緊張感も、翔平のもたらす雰囲気によって、もはや解き放たれた。
唯一…
そんな彼の様子に打ち震える少年の存在を残して。
(すごい………)
先刻の出来事は彼に鮮烈な衝撃を与えた。
浩巳は翔平の行動力に ただただ圧倒され、しばらくその場に立ち尽くしていたのだった。