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白雪姫にくちづけを
第24章 カラダの悩み
(今期になって、やたら人との会話が増えた…疲れる。)
世界史の発表を終え、次に当たった沖田が教師に注意されている間に、浩巳は窓の外に目をやる。
『沖田、また予習してないのか!』
(でも仕方ない…ある程度は人と喋る努力しないと。後から困るのはもっと面倒だしな。)
『くそぉ…浩巳、当たること覚えてたんなら教えてくれよ。』
教師からの説教を終え、席についた沖田が後ろから定規でつついてくる。
『うるさい。』
『冷たっ!( ºΔº )〣』
(ムダな話はしないがな。)
夏に過ごした翔平とカズヤとの時間は、彼の中に色濃く爪痕を残している。
彼らに投げられた言葉の中で一番気に入らなかった
──「逃げてばっかり」──
というカズヤの言葉に反発して、浩巳は今、意識改革真っ最中だ。
(いずれ社会に出れば、気に入らない人間と会話をしないといけない場面だってある。今までみたいに避けるだけじゃダメだ。)
あずさの頼りになる存在になりたいと願う彼は、今の自分にできる、最大限の努力をしたいと思っている。
そんな浩巳にとって、翔平は目標のようなものだ。
彼にあって、自分にないもの。
経済力、行動力、コミュニケーション能力、安定感や信頼感…
このまま変わりない生活を送って8年後、自分が彼のように成長しているとは到底思えなかった。
(経験のなさ、人との関わり合いのなさが弱点だ。視野が狭いままじゃ、あんな大人になれない。)
彼なりに導いた答えは
“手を抜かずに高校生活を送ること”
部活動にも所属していない浩巳は、高校生活に意義を見出すことができなかったが、将来の自分への経験時間と捉えることで、それを認識できた。
(どんな経験が今後の糧になるのか分からない。だからこそ、手を抜かないことに意味がある…と思う。)
そんな訳で彼は、口癖を封印し、苦手な授業もサボらないように心掛けることにしたのだ。