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白雪姫にくちづけを
第25章 オオカミ予報*
ゴロゴロゴロゴロ…ピシャッ‼︎
……ドドォーン……‼︎
ヒュオォォォォ…‼︎
雨が降りだして2時間後…外は本格的に荒れ出した。雷に加え、ガタガタと窓を大きく揺さぶる強風。
これ以上は帰宅が困難になると判断し、ヨネムラは閉店することにした。
『中山さん、傘使ってくれて構わないけど…この風じゃ、返って危ないかな…』
『大丈夫です!アパートは近いし、傘もなくて平気です。』
心配する夫婦に頭を下げ、あずさは裏口から出た。
(こんなの、どうやったってズブ濡れなんだから、仕方ない!)
あずさは意を決して、どしゃ降りの中へ飛び込んだ。
ハァ…ハァ…ハァ…!
(さ、寒…!とにかく帰ってから、浩巳に連絡してみよう!こんな天気じゃ、今日は会えないかも知れないな。)
携帯の入った鞄を抱えて必死で走ると、アパートが見えた。
『あずさっ!』
正面から、同じくどしゃ降りの中、駆けてくる浩巳の姿を見つける。
2人は急いでアパートの敷地に入った。
『はぁ…はぁ…あずさも、バイト早めにあがったの?』
『うん、浩巳も…?』
……っはくしょ‼︎
……くしっ‼︎
『とりあえず、入ろ。お風呂沸かすね!』
2人の体温を奪う、冷たい雨風。
あらしのよる、こうして2人は同じ部屋に入った。
その姿は一見、何らいつもと変わりない。
しかし、轟き光る雷雨には全て分かっていたのかもしれない。
彼らの奥底に眠る、オオカミとヒツジの、
長い夜が幕を開けたことを───