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白雪姫にくちづけを
第27章 忘却のカケラ


人混みも増し、店々がより活気づく頃には、光さす太陽もその色を変えた。橙に染まりゆく夕焼けの町並みは、先程とは また違った趣を見せ始めた。


(あ、あれ…はぐれちゃった?)


あずさが店先の品物に目を奪われている間に、側にいた彼の姿が消えていた。


(結構人通りが増えたな…そうだ携帯!……あ。浩巳、部屋に置いてきてたよね…。)


右へ左へと行き交う人々。
しばらく店前で待ってみたが、彼の姿は現れない。


(困ったなぁ…宿に戻った方がいいのかな?でも浩巳が探し回ってるかも知れないし、動かずここに居た方が…)


『はぐれましたか?』


ふいにあずさに声をかけてきたのは、同じ宿の客。あの写メを撮っていた女性の連れの男だった。


『…あ、同じ宿の。あなたも、彼女さんとはぐれたんですか?』


『ん、んー…ハハ。ウチはちょっと、ケンカ。』


(ケンカ?あんなに仲良さそうでも、ケンカなんかするんだ…)
そのカップルは、あずさより年上に見えた。
(学生…ではなさそうかな。社会人ぽいよね…)


『君さ、大学生?もしかして高校生かな?可愛いよね。』


(は?)


唐突な男の言葉に、あずさは身構える。


『ロビーではしゃいでたろ?その時から気になってて、話かけたかったんだよね。彼氏もえらく可愛らしかったけど…君には年上の方があってるんじゃない?』


(何この人…初対面なのに、言ってることがおかしすぎる。)


警戒の眼差しを向ける彼女に、男は身を近づけて話す。


『いや、彼氏いるのは分かってるけどさ。こうして出会ったのも何かの縁だし。ちょっとだけ、おれとお茶しない?』


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