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白雪姫にくちづけを
第29章 彼女の涙腺
*** *** ***
『あははは!鋼の涙腺!』
梨々子と芽衣と別れたあずさは、バイト帰りの浩巳と部屋でくつろいでいた。
『浩巳までそんなに笑って!』
あずさはご機嫌ナナメに腕を組んでソファに座っている。
『はは、ごめんって。でも確かに、あずさは泣かない子だったよね。』
『え、覚えてるの?』
『そりゃー…犬に噛まれても、上級生に叩かれても、滑って転んで溝にはまっても…おれの記憶では全部泣いてなかったもんな。』
『なんか…最後のバカにしてない?』
『してない!笑』
ニコッと笑ってあずさの頬に口づける浩巳に、彼女はもう一度聞いてみる。
『浩巳の記憶にあるくらいだから…少なくとも、あたしが6歳の時には、あまり泣かなくなってたってことだよね。』
『うん、そーなんじゃない?』
──=「あずちゃん、なかないでよ。」=──
『…あれ?』
(何だ?今のは、おれのセリフか…?)
『え?』
『いや…泣いてた記憶、もしかしたら一回くらいあったかなーって…』
『ほんとにぃ〜〜〜?
それいつ?どこで何してた時??』
『うー…ん、さぁ?はっきり覚えてない。』
そのまま話題は変わり、浩巳は日付が変わる前に、マンションへ帰った。