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白雪姫にくちづけを
第30章 彼の存在
───浩巳の搬送から遡ること3時間。
『あっ。くる…』
休み時間。
浩巳の後ろの席で喋っていた沖田は、急に眉間にシワを寄せて遠くを見つめた。
『あ?どうし……
ちょ、おいっ!?大丈夫なのか!?』
沖田の様子を見た浩巳は珍しく大声を張りあげた。
『はー…季節の変わり目だなー。いや、大したことじゃねーから、気にすんなー。』
そう言う沖田は、頬杖をついてダラダラと鼻血を垂らしている。
『ばか言ってないで鼻血拭けよ!』
浩巳は咄嗟に自分の制服の袖で、彼の血をぬぐってやった。
白いワイシャツに、鮮血が滲む。
『あ、いいのに…浩巳優しいな…//』
『頬を赤らめるな。この上なく不快だ。』
そこで沖田はようやく、手荷物からタオルを出して鼻にあてがった。
『おれ季節の変わり目によく鼻血出るんだ。特に春は結構な量でさー。今日みたいなあったかい日なら尚更。もう慣れっこだよ。』
沖田は相変わらずのんきに話している。
その間にも、タオルがじわじわと染まってゆく。
『お前、上向かねーの?止まらねーなら、保健室行くか?』
浩巳は半ば呆れながら話す。
『あー、上向いたら血飲むだけで、実は治りは早くならないって知ってた?』
沖田は他人事のように話している。
それにしても、彼の鼻血の量は多い。体質的に沖田の粘膜が弱いのか、すぐに治まる気配がなかった。
『とにかく保健室行くぞ。お前は慣れてても、おれが慣れてないんだ。対処できねーよ。』
浩巳は周囲に事情を告げ、教室を出た。