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白雪姫にくちづけを
第30章 彼の存在
『…何で結局連いて来てんだよ。』
『浩巳、おれにだってな、良心のカシャクぐらい備わってんだぞ?2人でやれば早く終わるしさ!』
『へぇ。初耳。』
笑みをこぼしながら作業を開始する。
沖田の担当は、本棚一個分の分厚い書籍。2人でも…五往復は下らない量だった。
『おい…ふざけてんな。部活の筋トレよりタチ悪ぃだろ。なんだこの量は!』
『お前の普段の行ないの賜物だ。』
そんな会話をしながら二往復した頃…
は…はっ…ハクショッッ‼︎
くしゃみを引き金に、沖田が派手に鼻血を吹き散らした。
階段の上部に佇む彼の周辺はもはや、殺人現場のようになっている。もちろん、抱えられた本も被害甚大だ。
『大丈夫か?後はおれがやってやるから。お前、本当に今日は帰れよ。』
浩巳は、降りてきた沖田から本をそのまま受け取る。
『ごめんな、浩巳…』
『気にすんな。本の血は、先生におれから謝っとくよ。ま、許してくれるだろ。』
浩巳はまた、服の袖口でゴシゴシと本の鼻血を拭う。
(帰ったら、母さんには怒られるかもな…さすがに洗濯じゃ落ちないだろ、血痕。)
『浩巳、やさしい!』
『へいへい。いーから、鼻拭け。』