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白雪姫にくちづけを
第30章 彼の存在
『じゃあ、気をつけて帰るんだぞ!電車で他人に血を引っかけるなよ!』
『サンキュー!おれ、浩巳に惚れ直しちゃったぜー!』
(鼻血以外は、元気だな…)
沖田が階下に消える姿を見届けた浩巳は、ため息をついて階段を登りはじめる。
(ちょっと抱えすぎたか?前見えねーな。)
そう思った矢先だった。
ズルッ…
(あ…)
ドサドサドサドサッ!!
ガガガガッガタンガタン!!
ダダダダダッダダダダンッッ!!
タンタンタン…
『…浩巳ー?何かものすごい音したけど…』
戻ってきた沖田。そこには目も当てられない光景が広がっていた。
『おぃっ!!!大丈夫か?!浩巳!!』
急いで駆け寄るも、浩巳は虚ろな表情で反応がない。
(う………ダセ…落ちた……)
『誰かっ…誰か来てくれ!
しっかりしろ!聞こえてるか?!浩巳!!』
(……あたま…いてぇ…)
動かない体、割れるような頭の痛さ…
浩巳は沖田の呼びかけが遠のく感覚の中、ぼんやりと意識を手放した。
階段に落ちた血に足を滑らせ、浩巳は十数段ほど落下し、踊り場で体を強く打った。
彼の抱えていた鼻血付きの書籍は派手に散り…浩巳の白いシャツを次々と赤に染めていったのだった。