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白雪姫にくちづけを
第30章 彼の存在
『幸い、軽い打ち身だけですって。一緒に落ちた本がクッションになったとかで…脳にも異常はないそうよ。』
母は安堵の声で話す。
『さっきまで、お友達、居てくれたの。沖田くん?アンタの制服の血は彼のだってね。ひどく責任感じて落ちこんでたんだけど…彼も貧血ぎみで顔色良くなかったから、お帰りいただいたのよ。アンタが無事だって知って、泣いて喜んでくれたわ。』
『そうか…次会ったら礼言っとくよ。』
(体調良くねーくせに…悪いことしたな。)
『ま!その点滴が終わったら、帰れるみたいだし。それまで休んでなさいな。私はこの…シャツでも洗ってくるわ。捨てるにしても、一応ね。』
『おー…』
ガラガラガラ…
(とにかく無事で良かったわ…ホッとしたら気が抜けちゃった。
…私、何か忘れてる気がするのは…気のせいかしらね?)
浩巳の母は、動転したままあずさに電話をしたことをすっかり忘れてしまっている。
あずさは まだ知らない。
血だらけの理由。彼の回復。傷の度合い。
母が出て行って5分後───
ドタバタと騒がしく廊下を走る音が浩巳の病室に近づいてきた。