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白雪姫にくちづけを
第30章 彼の存在
あずさは急いで扉を開けた。
ガラッ
『!…あずさ?』
息を切らして駆け込んだ病室には、ベッドに座る浩巳の姿があった。
点滴を受けているものの、至って顔色も良い。
『浩巳!!大丈夫なの?出血は?!』
血相を変えて駆け寄るあずさに、浩巳は頭を傾げる。
『出血…て、ケガのこと?ほら。』
見せられた腕と足には、かすり傷のような、打ち身のような跡があるが、どこにも大きな損傷は見られない。
『階段踏みはずすなんてみっともないよな…頭はちょっと打ったけど、幸い脳も心配いらないってさ。』
『出…出血がひどくて、意識がないって…!あたし死んじゃうかもしれないって…!!』
『は?!あー…それってもしかして、母さんが?…脅かしてごめん、でもそれは誤解なんだ。確かにしばらく意識は飛んでたみたいだけど、傷は大したことないし。血も殆ど出てないよ。この点滴が終われば、すぐに帰れるって。だから何も心配いらないよ。』
明るく話す浩巳の姿に、あずさは緊張の糸が切れた。