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白雪姫にくちづけを
第31章 約束の花
『どうしたの、こんなとこ来て?』
ここは昼間、芽衣が誓いを立てた教会だ。
『…少しだけ許可とったんだ。入ろう。』
浩巳は急に顔を緊張させて、教会の扉を開いた。
『わぁ…』
夕日が差し込むステンドグラスは、昼間とは違った表情を見せ、人気のない教会を色鮮やかに照らしている。
『あずさ、一緒に歩いてくれる?』
柔らかい笑みをたたえた浩巳が、あずさの手をとって導く。
今日、芽衣が歩いた大理石のバージンロードを、ゆっくりと進む。
(わぁ…まるで花嫁と花婿みたい//ドキドキするなぁ…)
神聖な空間に、2人の足音だけが響き渡る。
祭壇前まで来ると、浩巳はあずさと向き合い、足を止めた。
『あずさ…あの約束、覚えてる?』
『えっ…』
浩巳の顔は夕日のせいか、少し赤みを帯びて見える。
『それって、昔の…』
真剣な表情の浩巳から、あずさは目が離せない。
『そう、あずさの引越す前の日。
あずさと離れたくなくて…あずさの涙を止めたくて…言った言葉だったけど。』
熱を纏った、彼の視線。
『きっと、おれは本気だった。』
浩巳は彼女の両手をとってキュッと握る。
あずさの鼓動が、少しずつ早鐘をうち始める。
『今は…時々しか会えなくて、少し寂しい思いさせてるけど。
おれが大学卒業したら、あの約束、叶えよう。』
『…!』
『おれ、あずさと離れるの、もう嫌だから。
ずっと一緒にいられる方法、選んでいいよね?』
そう言うと、彼はスーツのポケットから小箱を取り出した。