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白雪姫にくちづけを
第32章 番外編
*** *** ***
遠藤家。
『ただいまー。』
『おかえりなさい、あなた。』
『おかえり。』
『お、浩巳。珍しいな、いつもなら部屋にいるのに。』
『うふふ。あなた、浩巳から夕飯前にちょっとお話あるんですって。』
母は、父の上着を片付けながら2人をテーブルに促す。
『おぉ、何だ改まって。就活の悩みか?』
浩巳の父は、母とは違い勘は鈍い方だ。大学4年の息子がしてくる話など、それしか思いつかないのも無理はないが。
『ま、飲みなよ。』
浩巳は目線を逸らすように瓶ビールを注ぐ。父が喉を潤した所で、単刀直入に切り出した。
『おれ、来年卒業したら結婚するから。』
『…っごほっ!!』
『相手は中山あずさ。今さら改めて紹介はいらないよな?…そーいうことだから、よろしく。』
言いたいことだけ言って去ろうとする息子を、父は何とか引き留める。
『こらっ…端的すぎる!中山のご両親には挨拶したのか?』
『…前提に付き合ってますと言ったことならある。2〜3年前だけど。』
『何だそれは。当人の意思だけじゃ結婚はできんぞ。まずは相手のご両親のだなぁ…!』
『やぁね、あなた。浩巳はこれからプロポーズするところなのよ?先走って追い詰めないのっ!』
熱弁しようとする父に、ご飯を盛りながら母は釘を刺す。
母には、いずれこんな日がくることが分かっていたのだろうか…変に茶化したりもせず、慌てるでもなく、浩巳を後押ししてくれる。
『浩巳の人生なんだから、あずさちゃんの気持ちと向かう方向が同じなら、時期はいつだっていいじゃない。特段、早すぎる訳でもないんだから。』
『しっしかし…大体、就職先もまだ決まってないうちから…!』
『まあ。就活中の息子を変に刺激するようなこと言わないでくれる?それに親なんてね、後からくっついてくるものなんだから。ましてやウチと中山家だもの。祝福間違いなしよ!』
パチンと片目を瞑った母は、浩巳を部屋へ追いやる。
『さ、浩巳は明日の就活の為に寝て寝て!あなたのグチは私が聞いてあげるわよ。』
(ふぅ…母さんがいて助かったな。)
こんな時、とても心強い母の存在に感謝しながら、浩巳は部屋に戻った。
★小言④
『あいつが結婚とは…。』
★小言⑤
『ふふ。よく頑張ったわよ、あの子。』