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白雪姫にくちづけを
第8章 足音


カランカラン

『いらっしゃいませー…あれ、カズヤ!』


『よっ!あずさ頑張ってる?』


『冷やかしはお断りだよ~!』


『何だよ、ちゃんと買うよ!』


『あはは、毎度あり。』


あずさのバイト先ヨネムラに、カズヤが来た。もう閉店も近いので彼がおそらく、本日最後の客だ。


『そういえば、あずさ、土曜の祭り行くの?』


『祭り?』


パンを袋詰めする あずさは、首を傾げる。


『あれ?大学近くの商店街でやるやつだよ。梨々子達から聞いてない?』


『どうだったかな…覚えてないだけかも(笑)またりっちゃん達と話しとく。』


『おー。じゃーな!』


(はぁ…お祭りなんて気分じゃないなぁ。)


『中山さん、もうすぐ閉店だから、レジ締めてくれる?』


『あ、はーい。』


(今日も浩巳、来なかったなぁ…)


無意識に漏れるため息。
気落ちした思いを ごまかすように、あずさは手早く片付けを終えた。


『お先に失礼しまーす。』


裏口を開けても、やっぱり浩巳の姿はそこにない。


(んもぉ~~こんなウジウジ悩むの嫌いなのにっっ!)


二度目の気まづい別れ方をしたあずさと浩巳が顔を合わさなくなって一週間。


あの後、あずさは謝罪とお礼の連絡をしたのだが、彼からの返信はなかった。


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