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白雪姫にくちづけを
第8章 足音
(ホント自己嫌悪だな……ん?)
コツコツ…ザッザッ
(んん?まさか、気のせいだよね?)
コツコツコツコツ…ザッザッザッザッ
(ちょっと…足音が、これ、尾けられてない?!)
───「夜道、一人じゃ危ないし。」
───「男には敵わないんだぞ。」
人気のない暗い帰り道を歩きながら、浩巳の言葉が頭によぎる。
(まさか、まさか気にしすぎ!あたしに限って、そんなこと…)
ザッザッザッザッ
あずさの意に反して、足音はぐんぐん近づき、とうとう何者かの手が肩に触れた───
『ヤーーーーーー!!浩巳ーー!!』
『うおぉぉぉ!あずさ!おれだよ!』
あずさの悲鳴に、肩を掴む人影もまた、びくりと震えた。
『!カズヤ!!』
『ごめん、ごめん。先に声かければ良かったな。立てる?』
カズヤは地面にへたりこむ あずさに手を伸ばすが、彼女は見上げて首を降るだけだった。
『む、むり…』
あずさは生まれて初めて、腰を抜かした。
結局、あずさは部屋までおぶられることになった。
(恥ずかしすぎる…。こんなマヌケな姿、浩巳に見られてないのが、唯一の救いだわ…)
『…じゃあここで。大丈夫か?』
『ありがと、ホントごめんね、大騒ぎして。おやすみ。』
『こっちこそ悪かったな。明日は無理すんなよ。』
(と、とんだ勘違いだった…!早く寝よう…)
赤面しながら早々と部屋に帰ったあずさは、気づいていなかった。
カズヤの後ろにもう一つ、足音が近づいていたことを。