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白雪姫にくちづけを
第8章 足音
───1時間ほど前。
浩巳はコンビニに向かっていた。
通りを挟んだ向かい側には、ヨネムラがある。
そこで、あずさの姿を確認する。
(やっぱり今日もラストまでか。)
あの日から、ヨネムラに行く機を逃してはいるが、毎日、学校帰りにあずさの姿があるかどうかを外から確認している。
この1週間で、あずさのシフトは閉店までだということが分かった。
(今日こそは、話かけるぞ。)
手には、母親のお遣いを装うコンビニの商品。あくまでも偶然出会って、あずさを家まで送り届けるのが、彼の目的だ。
これまで何度か同じことをやっているのだが…話しかけられずに、いつも そっと遠くから帰り道を見送っていたのだった。
(これ以上は完全にストーキングだ…そんな趣味はない!
早くあずさに謝って仲直りしないと、土曜の祭りに誘えなくなる…)
そうこう考えている内に、あずさが出てきた。
(…ん?)
(何だ?あの男、さっきヨネムラから出てきた奴じゃないのか?)
あずさの少し後ろを、男が歩いている。
(本当に変質者じゃないだろうな?)
タッタッタッタッ
浩巳が小走りで近づくと、男はこちらを見て、あずさに近づき出した。
(…ん?ちょっと待てよ?まさか…)
浩巳が足を早めると、焦ったように男はあずさに手をかけた。
『ヤーーーーーー!!浩巳ーー!!』
あずさの悲鳴が響く。
(どうやら、おれが、変質者だと思われたみたいだな…
む、むりもない…か。)
あずさの反応から、男が知り合いだと理解できたが、一応、距離を取ってアパートまでついて行った。