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白雪姫にくちづけを
第8章 足音
さすがにアパートの敷地には入れない浩巳は、物陰に隠れるようにして、見守る。
無事、男があずさをアパートへ送り届けたことを確認し安堵した。
…が、その男はアパートから出てこない。
(て、ことはここの住人なのか。)
『おい、誰かいるか!』
(!?)
さっきの男がアパートの出入口を見て回っている。
『…ハァ、おれの気のせいだったかな。』
かろうじて聞こえた独り言と共に、男はアパートに戻って行った。
(ビビった…。
ここの住人てことは、たぶん、大学生だな。あずさの友達なのか…?)
あずさが無事に帰れたことに安心しつつも、彼におぶられている姿が、浩巳をイラだたせた。
もとは自分のせいで あの男が警戒したからだが…あずさは悲鳴をあげて腰を抜かした。
(怖がらせた上に、おぶるなんて…!)
(こんなことなら、堂々とヨネムラの裏口であずさを待ってやれば良かったんだ!
そう、結局は、
悪いのはおれだ…)
マンションに戻りながら、浩巳は自分の不器用さを悔やんだ。