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白雪姫にくちづけを
第9章 きっかけ
翌日、水曜日───
ピンポーン
『受領印かサインお願いします。』
『はーい、ごくろーサマです。』
(ん?お母さんから…お、重っ!?)
『失礼しまーす。』
ドサッ!
越してきて初めて、母から荷物が届いた。あずさは玄関先で、小ぶりの段ボールを開封する。
【あずさちゃんへ
元気にしてますか?
そろそろ新しい生活にも慣れた頃かな?】
(お母さんの字だ…みんな元気かな?)
同封されていた手紙。
見慣れた文字を見て、あずさの心は温まる。
仲の良い家庭に育ったあずさだが、考えてみると、一人暮らしを始めてからというもの、実家にはほとんど連絡を入れていない。
たまにLINEで簡単にやり取りするが、電話で声を聞いたのは、確か初日くらいだった気がする。
【自炊はきっと、あまりしていないんでしょうね。】
(う…バレてる。)
【パンやパスタもいいけど、たまには自分で炊飯しなきゃ、お嫁にいって困りますよ。
少しずつ練習してくださいね。
浩巳くんとは仲良くしてますか?
大学のお友達とも、今しか作れない楽しい思い出をたくさん作ってください。
体には気をつけてね。
お野菜送ります。何とか頑張ってお料理してね!
ママより】
(…お母さん、会いたくなっちゃうなぁ。)
手紙をしまって箱の中身を確認すると…
『…イモばっか!?』
新聞紙の下は、段ボール一杯のじゃがいもで埋め尽くされていた。