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白雪姫にくちづけを
第9章 きっかけ
同じく水曜日───
浩巳はバイト先で口説かれていた。
『お願いっ!そこを何とか!』
『えーと…』
『急で無理言ってるのは分かってる!
でも遠藤くん、君しか頼れないんだよ。
土曜日、三時間だけでも、シフト入ってくれないかな?』
『…分かりました。』
ため息と共に、浩巳は観念した。
『本当に!?』
『…じゃあ断ってもいいですか?』
すかさず、浩巳は鋭い目つきで店長を見た。
『いやぁ…ハハ!助かるよホント!
じゃあ早速シフト入れちゃうね。13~16時っと!』
店長はサラッと浩巳の言葉を流し、バイトの予定を仕上げた。
今週の土曜は、あずさの通う大学付近で祭りがあり、この辺りの人通りはめっきり減ってしまう。
そのため、もともと少人数で店をまわす予定だったのだが、店長の外出予定が入ってしまったらしい。
その間、店に男手が一人も居なくなってしまうので、急遽、浩巳の出勤が決まった。
(まぁ本屋とはいえ…確かに防犯上良くはないよな。男が一人もいないってのは。)
ため息を漏らす浩巳の側で、在庫確認をしていた小泉•笹岡が、勝手に喋り出した。
『珍しいですね、遠藤さんが店長の依頼を渋るなんて。』
『お祭りデートの予定でもあったんじゃないの?』
『えぇ、遠藤さん、彼女いるんですか?』
『…うるさい。』
話しかけてきた小泉の言葉を遮り、浩巳はレジへ向かった。
『あんた、あんな無愛想男の何がいいの?』
『え…カッコイィじゃないですかぁ!!あんまり喋らない所もミステリアスで!』
小泉は軽く興奮しながら、レジに向う浩巳の後ろ姿に見惚れていた。