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白雪姫にくちづけを
第9章 きっかけ


『うそ、ここでバイトしてるの?』


『な、な、びっくりするだろ…』


浩巳は動揺しつつ、急いであずさの手から本を奪ってレジに通した。


『864円』


『う、うん…』


何となくバツの悪そうな顔をしているあずさの様子を見て、改めて彼はその薄い本の題名を見てみる。


『“はじめての基本料理”…』


『//!!…ほら!お釣りくださいっ!』


『はは…あずさ、自炊始めたの?』


お釣りを渡しながら、浩巳は顔をほころばせる。照れているあずさの様子が、可愛らしかった。


『これ、美味そうだよね?』


そう言って浩巳のゆび指した表紙には、肉じゃがが載っている。


『おれ、食べたいな?あずさの肉じゃが。』


『……本当に食べてくれるの?』


受取った本を胸に抱えながら、おずおずとあずさが見上げる。


『もちろん。食いたい。』


『……土曜日、空いてる?』


『もち…(あ、ヤベ、シフト入ったんだった)』


『あたし昼間はバイトだから、夕飯でいい?』


『うん…(祭り、行かないのかな?)』


『じゃぁ…また連絡するね。』


あずさはほんのり頬を染めながら帰った。


(なに、あの可愛さ…//)


ウソのように あっさり土曜の予定が決まり、浩巳のテンションは地味に上がった。


『…笹岡さん、あれは絶対、彼女ですよね…』


一部始終を裏から眺めていた小泉は、しょんぼりと呟いた。


『ねぇあいつ、口笛吹いてるよ。キモ〜ッ!』


静かな店内に響きわたっていた2人の会話は、見事に筒抜けであった。


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