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白雪姫にくちづけを
第10章 土曜日
『らっしゃい!スマンね、娘が無理に引っ張ってきたんだろ?まぁ、折角だから見てってよ。』
店主と見られる若い男性は、片手で少女を持ち上げて、あやしている。
(かわいぃ客引きさんだな。)
仲の良い親子の様子をみて顔をほころばせていると、奥から女性が出てきた。
『あら、可愛らしい学生さん!
ウチは食器がメインだけど、小物もあるのよ。見てってね。』
女性の指さす先には、ガラス細工の可愛らしい置物やアクセサリーがあった。
『キレイー…!』
あずさが手にとった小さなガラス玉の中には美しい花が咲いている。
無数の花が散りばめられたもの、古典な柄、ドットや無地のものなど、多種多様のものがあった。
『とんぼ玉というのよ。美しいでしょう。
一粒一粒、手作りなの。同じ柄は世界に一つとないのよ。』
女性は嬉しそうに教えてくれた。
『主人は工房に入れてくれないから、作り方は知らないけど…あの人が作るガラスは、とても美しくて好きなの。』
女性は店主らしき男性を見ながら微笑んでいる。
(やっぱり、あの女の子のお母さんなんだ。目もとが似てる…。素敵なご夫婦だなぁ…)
『真ん中に穴が空いてるでしょう?これで色々な装飾ができるの。
ウチは一粒から、アクセサリーにもできるわよ。彼氏やお友達と、お揃いでつけてくれる学生さんも多いわ。』
少し頬を染めて笑う奥さんに、あずさはアクセサリーの注文をした。
『これをネックレスに、あとこれを…』
*** *** ***
『バイバイおねぇちゃん!』
『まいど!』
買い物を済ませたあずさは、急いで商店街の奥へ進んだ。
(すっかり魅入って時間使っちゃった!
芽衣ちゃんの出し物は…確かこの辺…)
『あずさ!こっちこっち!』
梨々子の姿を見つけ、何とか5分前に間に合った。