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白雪姫にくちづけを
第11章 接近
ピンポーン
『『!!!』』
2人は同時に体を硬直させた。
玄関からは、涙を含んだ女性の声がする。
『あずさ、いる?…ウチ…ぐす。』
『まさか、りっちゃん?』
浩巳の腕から慌てて抜け出し、扉をあけた。
『りっちゃん!どうしたの?!なんで泣いてるの?!』
『うえ~~!!』
梨々子は声をあげて あずさに飛びついた。
ただならぬ様子の展開となり、浩巳は部屋を出ることにした。
『あずさ、友達?入ってもらいなよ。おれ、帰るからさ。』
『え、あ…』
泣きつく梨々子の背中をさすりながら、あずさがうろたえていると
『ぐす…!ごめん、あずさ!てっきり1人かと思ってて…』
『大丈夫です、もう帰る所だったので。じゃ。』
『あ!待って浩巳!』
脇をすり抜けて帰ろうとする浩巳を、あずさは引き止めた。
『りっちゃん、とにかく、部屋に入ってて?ゆっくり話きくから。その前に、ちょっと見送りだけさせてね?』
梨々子をなだめ、部屋に入れると、キッチンに用意しておいた袋を持って、あずさは浩巳と部屋を出た。
『ごめんね、なんか突然こんな…追い出すみたいになっちゃって…』
『いいよ、下まで送ってくれてありがとう。
もう、戻ってあげなよ。』
少し照れくさい雰囲気ながら、後ろ髪を引かれるような気持ちで2人は話す。
『あとこれ…お母さんが野菜、たくさん送ってくれて。1人じゃ食べきれないから、持って帰って?』
『あぁ、ありがとう。』
袋を渡す手が僅かに触れあい、2人の頬を淡く染める。
『じゃあ、今日はごちそうさま。
コレも、ありがとう。…おやすみ。』
『あたしこそ、ありがとう。気をつけてね…おやすみ。』
ブレスレットをつけた左手と、絆創膏のついた左手をゆっくりと上げ、2人は別れたのだった。