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白雪姫にくちづけを
第12章 募る想い
『浩巳、帰ろーぜ。』
『おれ、図書室寄ってく。』
『勉強か?めずらしーな、お前がわざわざ図書室行くなんて。つーかむしろ、すんな!もともと頭いーくせに、それ以上勉強すんな!』
『うるさいぞ。じゃーな、沖田。』
浩巳の通う高校は、テスト期間に入っていた。
授業は早めに終了し、部活動もバイトも禁止となるこの期間。以前までの浩巳は、試験勉強もそこそこに、自宅で趣味の読書を満喫して過ごしていたのだが。
(…今までは良かったのに。)
今回は、家での読書も勉強も、全く進んでいなかった。
ガラッ
ため息と共に図書室の扉を開けると、過剰なほどの静寂にのみ込まれる。
(いつ来ても不気味だ。)
彼は、昔から図書室独特の空気が大嫌いだった。
集中力を高める為というよりは、この場にいることを許される為に作り出される、無音空間。
息さえ殺しあって他人と静けさを共有しようとする神経が、彼には理解できなかった。
ただでさえ人の集まる場所が嫌いな浩巳だったが、今回は、無理にでもここへ来る理由があった。
(とにかく。家でできないなら、学校でするしかない。)
試験勉強中の生徒で溢れかえる中、彼はようやく見つけた空席に着く。
(…人、居すぎ。)
早くも居心地の悪さを実感しつつ、カバンから筆記用具と教科書を取り出した。