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白雪姫にくちづけを
第12章 募る想い
*** *** ***
ガチャ
『お疲れさま。』
『浩巳も、勉強お疲れさま。』
バイトが終わり、約束通り裏口で待っていた浩巳に、あずさは笑顔を向ける。
『パン、まだあったかいよ。』
『ん、ちょっと公園寄ろうよ。』
ベンチに腰掛け、あずさから受取った袋から、浩巳はひとつを彼女の手に渡した。
『あ、女の子はこんな時間に甘いもの食わないっけ?』
もう一つのパンを半分にちぎりながら、浩巳はあずさを伺う。
『え、気にしない。お腹すいたもん!』
浩巳の心配をよそに、既に、あずさはパンにかじりついていた。
『ははは、ほら。』
浩巳はちぎったパンをあずさに差し出す。
それを見て、あずさも急いで、自分のかじったパンの半分を彼に分けた。
特に言葉も交わさず、夜の静寂の中、2人はパンを食べた。
(不思議だな…無言なのに、居心地がいいなんて。)
久しぶりに会えた喜びが大きいものの、彼と過ごす時間は穏やかに感じられた。
『ふう…気分転換になったよ。』
浩巳は伸びをしながら、ベンチに浅く腰掛けなおす。
『顔見に来て、良かった。』
突然、まっすぐな瞳に射抜かれ、あずさは息を呑む。
『あずさのテストが終わったら、どっか遊びに行かない?2人で。』
『あ、あたしも誘おうと思ってたの…
花火大会、一緒に行かない?』
『花火…いいね。』
風がやさしく2人を通り抜ける。
『行こうか。』
惜しむように見つめ合った後、浩巳はゆっくり立ち上がる。
その時、ポケットにつっこまれた左手に、ブレスレットが光ったのが見えた。
(あ…つけてくれてるんだ。)
胸元のネックレスを握りしめ、あずさはつかの間の帰路を胸をときめかせて歩いた。