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白雪姫にくちづけを
第13章 花火大会
【迎えには来なくていいよ。
神社の前で、待ち合せしよう。】
あずさからのLINE通り、浩巳は現地で彼女を待っていた。
今日はカップルや家族連れなど、多くの人で賑わっている。駅も混雑していて、あずさが無事に待ち合せ場所まで来られるか、浩巳は心配していた。
少し時間も過ぎている。
(やっぱり駅まで迎えに行こう…)
そう思い、携帯に手をかけた時───
浩巳は彼女の姿を見つけた。
『…えっ……!』
女友達に背中を押されて、赤い顔で近づいてくる彼女は、あまりにも可憐だった。
『ごめん、ちょっと遅れちゃったね。』
『…………!』
『浩巳?待ちくたびれたの?』
『い、いや…//』
『…あの、どうかな?
友達がね、髪や浴衣、してくれたんだ。』
照れながら見上げる彼女の視線とぶつかり、浩巳の思考が停止する。
『う…ん、まぁ…』
うまく言葉が出ず、彼は一気に汗ばんだ体を反転させ、あずさに背を向けた。
(…あれ、褒めてくれない。好みじゃなかったのかな?)
いつも通り、やさしい言葉と笑顔を期待していたあずさは、気落ちした。
『…なんか、食う?』
『え、そうだね…。』
前を歩く浩巳はどんどん進んでしまい、あずさはすぐに離されてしまう。
『浩巳、待って!』
彼女の声にやっと気づいた時には、人混みに 姿を見失う寸前だった。
『あずさ!』
慌てて駆け寄り、手を掴む。
『ぷはっ!はぐれるかと思った。』
浩巳に手を引かれ、少し沿道に逸れて人混みから抜け出す。
『ごめん、浴衣だから歩きにくかったんだね。』
『ご、ごめんなさい…。』
(なんか、浴衣…着ない方が良かったのかな…)
しゅんと俯くあずさの様子を見て、浩巳は一つ 咳払いをしてから声をかけた。
ゴホ
『あー…//
その、今日は一段と可愛いから…
おれが舞い上がったんだ。ごめんな。』
見上げれば、照れくさそうな浩巳の顔。
『…似合うよ、浴衣。すごく。
他の奴には見せたくないくらい…//』
目を逸らし、赤らんだ顔で呟く声は、あずさの耳に ちゃんと届いた。
『どこか座れる場所、探そうか。』
顔を隠すように背け、手をひいて歩く浩巳は、今度はゆっくり歩幅を合わせてくれる。