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白雪姫にくちづけを
第13章 花火大会
『うそだろ…!』
さっきまで居たはずの彼女の姿が見当たらず、浩巳から一気に血の気が引いた。
『彼女いなくなってんじゃん。あたし達と遊ぼうよ。』
腕を掴む少女の手を払いのけ、彼はなり振り構わず駆け出した。
───下駄でそう遠くには行けないはず。
───携帯は…電波が悪くてつながらない。
───目を離した隙に、攫われたのかも知れない。
嫌な予感が頭を霞めるなか、頭上では明るい花が咲き始めた。
ヒュルルル~…
ッ…ドォン…!!
大気を揺らす音に、人々は空を見上げて立ち止まる。
後には こ気味良く、夜空の花散る音が耳に弾ける。
パチパチ…パチパチパチ…
周囲に湧きあがる、大きな歓声、拍手。
立ち止まる人々を掻き分け、通りを右から左に往復しながら探し回る。
『あず…!?…すみません、間違いました…』
(くそっ…電波はないままだな。反対側の道に行ったのか…?)
息を切らして沿道に逸れた時、鼻緒を気にしながらヒョコヒョコ歩く人影が目に入った。
ドォン…!!
咲き誇る大輪に照らされ、浩巳は大切な花を見つけた。