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白雪姫にくちづけを
第13章 花火大会
『あずさ!!!』
振り向いた瞬間、あずさに大きな影が降りかかる。
『心配した…!』
浩巳はそう言って、あずさをきつく抱きしめたまま動かない。
『浩、巳…』
息せく彼の腕の中。少しずつ高まる鼓動を感じながら、あずさはそっと口を開く。
『ごめん、なさい…。
あたし、浩巳が他の女の子といるの、見ていられなくなって、それで…
だけど気づいたら道も、分からなくなってて…』
溢れ出す、彼への想い。
(嫌だった。浩巳が他の人に盗られたみたいで、すごく…!この温もり、誰にも渡したくないよ//こんな、幼稚な嫉妬をするくらい…あたしは浩巳のことが…!)
『あたし、あたしね…!』
あずさが声を振り絞った時───
彼女を抱く浩巳の腕に、力が込められた。
ドン…ドォン…、、
『好きだ』
次々にあがる、夜空を照らす花。
大音にかき消された彼の言葉は、周囲の誰にも届かない。
…ただ一人、
腕に抱くあずさだけを、強く震わせた。
『おれはあずさが、好きだよ。』
『ほ、ほんとに…?
あたしも、好き。好きなのっ…!』
『…嬉しいよ//』
耳元で囁く彼の言葉が、あずさの胸を締めつける。苦しい程の疼きに耐えきれず、すがるように彼の服を掴んだ。
人目もはばからず、熱い抱擁に身を委ねる2人。
ふいに浩巳は腕を緩めて、あずさの顔をまっすぐ見つめた。
照れながら微笑む彼の顔は、ゆっくりと彼女に近づき…
『今日は、逃がさないよ…』
『…っん』
やさしく その唇を重ねた。