この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
笑える復讐劇
第1章 憾み

炎のように燃える夕日に照らされた住宅街を重い足取りで歩んだが、気持ちは太陽と共に沈むばかりだ。二時間ほど前までは楽しいデート中で、彼女の事を愛おしく思っていた吉川和人だったが、今ではその真逆の感情が彼を支配している。
藤原香奈恵は和人が二十一年の人生で初めてお付き合いをした女性だった。七ヶ月ほどの長かったような、短かったような時を共に過ごして来た仲である。初めての彼女と言うだけあって、和人は恋愛に真剣だった。普段なら面倒くさいメールもなるべく三行以上で返したし、興味のないお洒落も頑張って勉強した。とにかく必死で、社会人である二歳年上の彼女に見合う男になろうとしていたのだ。だがその努力も虚しく、今日のデート終わりに香奈恵は別れを切り出す。
「悪いけど、アンタとの将来が見えないのよ」
衝撃的な展開に身を任せ、流れで彼女の願い通りに別れたのだが、今ではその判断に後悔している自分がいた。デート先だった遊園地から自宅までの距離は、おおよそ一時間の電車と二十分の徒歩。それだけ長い時間の間、和人は振られた瞬間の事を思い返していた。唖然から悲しみ。悲しみからの受け入れ。受け入れからの自己嫌悪。自己嫌悪からの現実逃避。そして現実逃避からの憎しみ。永遠にも感じるほど苦しい激情にかられ、たっぷりと考えを巡らせた彼が最終的に辿り着いたのは、香奈恵への恨みである。普通の人ならば理性で切り捨てるような邪心。それは一種の救いとして和人の心の中にはびこった。俺は悪くない、悪いのは香奈恵なんだ。そう思い込む事によって、己の男としての誇りを守ろうとしていたのだ。
藤原香奈恵は和人が二十一年の人生で初めてお付き合いをした女性だった。七ヶ月ほどの長かったような、短かったような時を共に過ごして来た仲である。初めての彼女と言うだけあって、和人は恋愛に真剣だった。普段なら面倒くさいメールもなるべく三行以上で返したし、興味のないお洒落も頑張って勉強した。とにかく必死で、社会人である二歳年上の彼女に見合う男になろうとしていたのだ。だがその努力も虚しく、今日のデート終わりに香奈恵は別れを切り出す。
「悪いけど、アンタとの将来が見えないのよ」
衝撃的な展開に身を任せ、流れで彼女の願い通りに別れたのだが、今ではその判断に後悔している自分がいた。デート先だった遊園地から自宅までの距離は、おおよそ一時間の電車と二十分の徒歩。それだけ長い時間の間、和人は振られた瞬間の事を思い返していた。唖然から悲しみ。悲しみからの受け入れ。受け入れからの自己嫌悪。自己嫌悪からの現実逃避。そして現実逃避からの憎しみ。永遠にも感じるほど苦しい激情にかられ、たっぷりと考えを巡らせた彼が最終的に辿り着いたのは、香奈恵への恨みである。普通の人ならば理性で切り捨てるような邪心。それは一種の救いとして和人の心の中にはびこった。俺は悪くない、悪いのは香奈恵なんだ。そう思い込む事によって、己の男としての誇りを守ろうとしていたのだ。

