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笑える復讐劇
第1章 憾み
 愛情と憎悪は紙一重。そう言ったのは何処の誰なのだろう。これほど己に当てはまる言葉を、和人は知らない。幸せな気持ちは一瞬にして絶望へと変わり果て、もう生きる事が嫌になりそうだった。よく映画の主人公が失恋した時、悲しみに陥るシーンがあるが、和人は「そんな馬鹿な」とそれを嘲笑う人間だった。それがどうだろう、今ではまさにその主人公と同じ立場にいる。かつて自分が嘲笑った人間に成り下がった事に、怒りも生まれた。

 畜生、畜生、畜生! 帰り道をダラダラと歩きながら吐かれた彼の毒づきは、家に着いても続く。むしろ、部屋に辿り着いた彼の行動は悪化する一方だった。香奈恵が残して行ったぬいぐるみ、香奈恵がプレゼントしてくれた使いかけのマグカップ、香奈恵が勧めてくれた詩集、香奈恵の忘れて行ったパンティー……。自室の全てが憎たらしい物で溢れかえっている。和人は怒りに任せて香奈恵の存在を匂わす全てを壊し、部屋の片隅に置いてある小さなゴミ箱へ投げ捨てた。それでもゴミ箱に収まりきれず物が溢れかえったが、和人は気にしない。今はただ裏切り者の痕跡を部屋の中から全て消したかったのだ。

 物理的に存在する香奈恵の持ち物を捨てれば、今度は窓際のデスクに置いてあるノートパソコンに手を伸ばす。開きっぱなしの暗い画面を眺めながら起動ボタンを押せば、三秒たらずでログイン画面が表れた。パスワードを記入してアカウントに入った和人は迷う事なくメール画面をインターネットブラウザで開く。そして今まで香奈恵から届いたメールの一つ一つを丁寧に削除して行った。一通消すたび、和人は「死ね、死ね」、「消えろ、クズ女」などと呪文のような恨み言を息の下から呟き続けた。

 流れ作業のように繰り返される削除の行為は、留まる事を知らない。恐らくこのペースのままで作業を行えば、一時間ほどで一万通を超える全てのメールがデータから消えるだろう。それほどの集中力で和人の手は動いていた。
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