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第1章 憾み

　話し終えれば、本当に少しだけ……ほんの少しだけ心が楽になったような気がした。チャット内容を振り返れば、かなり香奈恵の自己中心的な行動を省略してしまった部分があるのに気がついたが、同時に感傷的になった自分の文に恥ずかしさが込み上げる。こんな陰口なんて女々しい行動、現実世界でやってしまったら二度と外を歩けないだろう。

　和人は人柄が良い。それは総じて彼と関わった人間が抱く感想である。幼い頃から真面目で勤勉、高校までは少し社交性に欠ける部分があったが、他人から話しかけられれば会話のキャッチボールは続けられる。在学中の大学での成績も上乗。絶え間ない静かなる努力で教授達の支持も高い。それを鼻に当てる事もなく、課題をこなす姿はよく見かけられた。

　数年前……高校を卒業する頃までは根暗な雰囲気を醸し出していたのがコンプレックスではあったが、今はそんなネガティブな空気を一切纏っていない。それは大学に進学して出会った、恋人の香奈恵のお陰だろう。マドンナとまでは行かないが、元気で人気者の彼女に惹かれた和人は、珍しく積極的に自分を変えようとした。少しでも彼女のように明るく、少しでも彼女のように社交的に……。