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第1章 憾み

　だが、努力ではどうにもならない挫折を経験してしまった。
　
　苦労して「完璧」まで持ち込んだ人生。それを無遠慮に打ち壊した女———香奈恵だ。

　突然の別れがもたらしたのは、いつの間にか培われた傲慢な感情を浮上させる事だった。大切に……本当に大事に彼女を扱っていたはずなのに、納得のいかない結果だ。むしろ何が悪かったのかがサッパリ分からない。女性の求める男性像を忠実に生きて来たと思うし、和人は自身に非は無いと確信していた。だからこそ、腹の底が煮えくり返るように熱い。

　失恋とは、最も人間が否定されている状態。そう言う認識を和人は持っている。しかも「アンタとの将来が見えない」などと未来までも否定されては、人間として和人を辱めるのに十分な言葉だった。

　そんな事は許さない。許されるべきではない。

　今まで通り「努力」で彼女の心を取り戻す事も可能ではあるだろう。しかし、何の予兆も見せずに捨てられた和人は怒りを覚えている。慈悲や情けなどの単語など脳裏に浮かぶ余裕などなかった。