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あたかも普通の恋愛小説
第15章 秘密の花園
「え、あ、…じゃあ誰が雇ってるとかも」
「お母さんでしょ?」
当然知ってますよーみたいなトーンでいうと郎太は唖然茫然の構え。え、どうしたのかな。
「知ってて、小鳥は何とも思わなかった?」
「うん?」
なにかな。郎太の言いたいことがみつからない。私は小首を傾げた。
「だってそういうの嫌だったりしない?井藤とかすごいキレてたし、俺の親父もうんざりしていなくなっ――」
言いかけてハッとしたのか郎太の声は途中で消えた。
私は今まで知らなかった郎太のことをまた一つ、知ってしまったようだった。
「……うちの親は俺が小さい頃離婚して」
「そうだったんだ」
「だから。そんな母親がいたら、小鳥だって逃げてくだろうって……」
吐き捨てた言葉はまるで小さい男の子が泣きそうなのをこらえてるときみたいで。私は郎太に手を伸ばした。
「私が郎太から逃げちゃうの?――こんなに好きなのに」
郎太の手をとって頬擦りをした。大きな温かい手のひらが気持ちいい。うっとりしちゃう。
今でもどきどきしてるんだよ。一緒にいるだけで。貴方を思うといつでもときめいちゃうんだよ。
たとえどんなに郎太のお母さんが私を認めてくれなくても、郎太が私を切り捨てるまでは私は郎太についていく。