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秘密
第1章 静寂の夜
けれども今、そのもっと深い場所で何かが頭をもたげようとしているようで、心は不安に怯え、躰は浮遊しているように落ち着かない。




──今でも君を…



続きを知るのが怖い

真っ直ぐに見つめてくる瞳が怖い


沙織は絡みついてくる視線から身を守るように、膝を抱えて小さくなった。




ようやく戻って来た慎一郎に背を向けたまま、沙織は1人、眠れない夜を過ごした。

後ろから抱き締めてさえくれたなら、一瞬で消える筈の目の前の霧が今夜も消えない。

沸き上がる疑問も、よろめいてしまいそうな不安も、全て解決してくれるに違いない子供という鎹(かすがい)は、いつまでも手に入れられない。


慎一郎の寝息を背中で受け止めながら、沙織は変わってしまいそうな自分と変わらない夫を、天井から冷静に眺めていた。



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