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秘密
第7章 剥がれた仮面
「えっ?」


沙織は背を向けたまま思わず声を発した。

夫の出張の話などすっかり忘れていた。


「日曜には帰る。
明日は早いから寝てていい。………じゃあ、おやすみ」


沙織の言葉を待たずに扉が閉まった。


「………」


妻失格だと思いながらも、静かな解放感が訪れる。


嘘をつく必要がなくなった

明日は木曜、日曜日に帰宅……


健さんと過ごせる


「………」


夫は…

何を話し合うつもりなのだろう

この出張で何かあるのだろうか

やはり出張先に女


慎一郎の声はいつもと違い、決意のようなものが伺えた。


微笑んでもいなかっただろう

何を話すの?


慎一郎が誠実に全てを告白したなら、沙織も倉本との事を話してしまいそうだった。


その先はどうなるのだろう

家族の愛情や信頼を全て裏切って、倉本の元へ行けるのだろうか

夫は誰を選ぶのだろうか


割り切れない想いが心を疲れさせる。

早く倉本の胸に飛び込みたかった。



最後の会瀬になるかもしれない

あの人を失って

どんな顔をして生きてゆけばいいのだろう


沙織は終わりがくる事に怯えていた。そして、家庭を壊す事にも怯えていた。




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