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秘密
第7章 剥がれた仮面
家の中では慎一郎だけがいつもと変わらない様子だった。

咲子は咲子で、沙織は沙織で平静を装い、お互いに浮き足立っていた。

そんな中で沙織はふと、もしかしたら義母の言う松野というのは、男ではないだろうかと想像してみる。

百合子が持ってきた縁談を軽くかわした事や、付き合いを理由に遅く帰宅する事、いつか見た下着。それは沙織の想像の域を出なかったが、いつも落ち着いた美しさを放つ義母になら、あって当然の事に思える。

立ち入るつもりは毛頭ない。むしろ嬉しかった。そして家族にも言えず、密やかに温め合える関係をそっと見守りたくもあった。


考え過ぎかもしれない…

今の自分がそうだから、そんな想像をしてしまうのかもしれない

でももしもそうなら、義母の味方になろう





苦痛でしかなかい夫とのやり取りも、倉本と逢える日の事を思い容易にこなせていた。


咲子の旅立ちを二日後に控えた夜遅く、いつものように横になっている沙織の部屋の扉が開いた。

暫くの沈黙の後、慎一郎が低く語りかける。


「沙織、帰って来たら話し合おう。……出張が1日増えて明日からになった。明日は早く家を出るよ」



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