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秘密
第8章 秘密
『今日は予定通り7時でいいのかい?
遅くない?』


出勤途中に倉本からメールが入った。


『大丈夫です』

『では、7時に君をいただきます』


沙織はクスクスと小さく笑って携帯を閉じた。


気持ちの良い秋晴れの下、振り返った我が家に洗濯物は干されていない。

夜のうちに洗い、バスルームに下げて乾燥ボタンを押した。

朝早く出掛ける咲子を笑顔で見送ってから、沙織は全ての家事を済ませ、すっきりと片付け、玄関まわりも掃き清めた。

内も外も、塵一つ残さないように綺麗に仕上げて家を出た。

化粧品と替えの下着を小さなバックに忍ばせている。

実家にさえ滅多に泊まらない沙織は、小さな冒険にでも出掛けるように足取りが軽い。


仕事が終わったら軽く食事をして、化粧を直して、電車に乗って2駅…


頭の中で計画を確認する。


人目につくデートはできなくても充分幸せだ


胸踊る一日が始まっていた。


今日と明日は、これまでで一番素敵な時間にしたい

健さんだけを見つめて幸せを胸に刻みつけたい


沙織はそう決めて家を出たのだった。




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