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秘密
第9章 露見
「ここを出て一緒に食事でもしない?」


背中を向けて着替えている沙織に、倉本が名残惜し気に言った。


「……別れるのが辛くなってしまうわ」


倉本の顔を見ないように返事をする沙織は、倉本が伸ばした腕に捕まり仕方なくベッドに腰を下ろした。


「君の帰る場所は、君が幸せになれる場所なのか?」

「……帰らなくちゃならないの」


沙織は背を向けたままで俯いた。


「…旅先の、義母の体調も気掛かりだし」

「家族、か…」

「えぇ、凄く大切にしてもらっているの」


倉本もベッドを下りて着替え始めた。


「上品で、若々しいお義母さんだろ?」

「えっ?」


「だいぶ前になるけど、…俺が学生の頃だったかな、西村さんと歩いてるのを見掛けた事があるよ。
買い物に付き合わされてるんだ、って笑って紹介されたから、なんとなく覚えてる」

「そう…、昔はそんな事をしてあげてたのね。
ふふっ、今は義母の身体を心配してあげる暇もないみたい」


ため息混じりに呟いた。

「仕事そんなに忙しいんだ、大変だね」


沙織の隣に腰掛けて、倉本は沙織の髪を撫でた。


「本当にいろいろと忙しそう…」

「君に構ってあげる暇もない程?」




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