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秘密
第9章 露見
「………」


慎一郎に叩かれた夜を思い出した。

現実が沙織の前に立ちはだかる。


「俺、なんか変な事聞いた?」


沙織は慌てて首を横に振った。


「きっと、私が知らない所でいろいろと大変なんだと思う」


倉本が沙織の肩を抱いた。



この温もりを、忘れられるだろうか

冷たい布団でひとり、この人を想うのだろうか



「次はいつ逢える?」

「………」

「また誘ってくれる?」


しがらみを脱ぎ捨てれば、この肉体も全て削り取ってしまえば、後に残された透明な心はほんのり紅く色付いて、迷わず倉本の元へと急ぐだろう。


「……こんな事、いつまでもそう長くは続かない」

「沙織…」

「私、あなたに逃げてばかりだわ」


込み上げてくるものを隠そうと立ち上がりかけた沙織を、倉本が抱き締めた。


「俺の事好き?」

「…っ…」

「俺は好きだ」

「………」

「俺は君を放って置かない、……そんな事できるわけがない。ずっと、君を愛してきたんだ」

「やめてっ。
私、あなたを利用しているだけなのよ」


訴えるような沙織の瞳を倉本はじっと見た。


「利用してくれよ、
俺はちっとも構わない」





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