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秘密
第1章 静寂の夜
暗闇に目が慣れてしまわないうちに、沙織はそっと目を閉じた。
部屋の明かりを消した夫が静かに隣に横たわる。
ベッドの揺れが微かに背中に伝わりようやくおさまった時、生暖かい吐息が沙織の耳元をくすぐった。
「沙織…」
やっぱり…
義弟夫婦に子供が出来てからというもの、これまでにも増して長男夫婦の子供を望む声があちこちから聞こえてくる。
今日も生後3ヶ月を過ぎた赤ん坊を初めて実家に連れて来た夫婦を見ながら、後から駆け付けた義母の妹、百合子が夫の慎一郎を急かしていた。
「慎ちゃん、もっと頑張りなさいよ、結婚してもう何年なの?」
いつものように目を細めてその言葉をかわし「面目ない」と頭を下げ、皆の明るい笑いでその場をしのぐ慎一郎の横で、沙織は「すみません」と小声で言い頭を下げた。
「沙織さん、気にする事ないわ、百合子はね、暇なのよ。
人様の家庭の事にまで口を挟むほどにね」
いつものようにかばってくれる義母の助け船にほっとしながら、沙織はその頼れる眼差しを見つめて小さく頷いた。
慎一郎の子供を待ち望んでいるのは義母も同じ筈だ
でもその願いは叶えてあげられそうもない
部屋の明かりを消した夫が静かに隣に横たわる。
ベッドの揺れが微かに背中に伝わりようやくおさまった時、生暖かい吐息が沙織の耳元をくすぐった。
「沙織…」
やっぱり…
義弟夫婦に子供が出来てからというもの、これまでにも増して長男夫婦の子供を望む声があちこちから聞こえてくる。
今日も生後3ヶ月を過ぎた赤ん坊を初めて実家に連れて来た夫婦を見ながら、後から駆け付けた義母の妹、百合子が夫の慎一郎を急かしていた。
「慎ちゃん、もっと頑張りなさいよ、結婚してもう何年なの?」
いつものように目を細めてその言葉をかわし「面目ない」と頭を下げ、皆の明るい笑いでその場をしのぐ慎一郎の横で、沙織は「すみません」と小声で言い頭を下げた。
「沙織さん、気にする事ないわ、百合子はね、暇なのよ。
人様の家庭の事にまで口を挟むほどにね」
いつものようにかばってくれる義母の助け船にほっとしながら、沙織はその頼れる眼差しを見つめて小さく頷いた。
慎一郎の子供を待ち望んでいるのは義母も同じ筈だ
でもその願いは叶えてあげられそうもない