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秘密
第1章 静寂の夜
沙織はそう思いながら、夫の薄い唇がそっと重ねられるのを目を閉じたままで受け入れた。


半年ぶりだ


その唇は、少しでも顔を背けようものなら二度と触れ合う事はないとでも言いたげな儚い感触で、軽く閉じた沙織の唇を押し開く事もできない。

沙織の躰をベッドの中心に引き寄せる事もなく、慎一郎の右手は柔らかな髪を撫でる。

首筋から肩へゆっくりと移動する手は息遣いと変わらぬ冷静さで、沙織は全身の力を抜き、息を殺してその動きを感じようと努めた。

肩の丸みを確かめて手のひらが鎖骨の辺りに戻ってくる。

高く盛り上がった二つの膨らみを優しく丁寧にうすくなぞり、腹部をそっと撫でながらパジャマのズボンとショーツをゆっくりと下げていく。

まるで遠い昔から脈々と受け継がれてきた儀式のように、静寂の中で息をひそめ、注意深く執り行われる宴。


この人に荒々しさはないのだろうか…


慣れ親しんできた一連の手順がもたらしていた筈の安心感が、いつしか沙織の中で小さな疑問に変わってきていた。

パジャマのボタンを外し、薄いキャミソールの布一枚をめくれば、そこにはたわわに実りきって収穫をまちわびる形の良い乳房がある。


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