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秘密
第3章 渦巻く疑念
今の…


沙織は持っていた着替えを放り出して夫の胸元に手を伸ばした。


「………」


速くなる鼓動にゴクリと唾を飲み込み、指先を震わせながら閉じてしまったパジャマの胸元を摘まんでゆっくりと開く。


「………」


滑らかに盛り上がった左胸の内側に、赤黒い小さなキスマーク。

まるで自分の所有物だとでも言うかのように、夫の胸から顔を上げた女が沙織を見て薄ら笑いを浮かべている。


「………」


沙織は夫を起こさないようにボタンを掛け直し、タオルケットをふわりと被せた。


「お仕事お疲れさま」


沙織はそう言い残し、足元に散らばった下着を拾いバスルームへと階段を下りた。

沙織は冷静だった。


躰に女の印を纏い、衣服を脱がずに私を抱いていた夫

形だけの愛撫

満たされた事のない欲望


微笑みや優しさに違和感を感じ始めたのはいつからだろう…

夫は

誰を見つめているのだろう

その女には激しく腰を振っているのだろうか


沙織はバスタブに浸かり目を閉じた。ブクブクと頭まで湯に沈んだ。


辛くはないのだろうか

隠し続ける事が

私を大切だと思っているのだろうか

嘘にまみれて…






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