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秘密
第4章 乱されて
『会わないか?』


倉本からのメールは、あの夜から挨拶文ではなくなった。


『どうしてる?』


『君に触れたい』


『顔を見るだけでいい』


毎日1度きりの一言が沙織を支え、冷えていく心を温めた。

家族は何も知らず、同僚達も何も変わっていない。

湿気を含む風が涼しくなるにつれ、沙織の心はふつふつと熱くなっていった。

強く求めてくれる男に、この身を差し出す事をとどまらせてくれるものはもうなかった。

あるとすれば、母親や義母。沙織の中にある貞操観念の様なもの、それから自分らしくない行動への恐れ。


できない

できるわけない…


沙織は人ごとでしかなかった不倫の2文字に抵抗しながらも、激しく愛される事を望んでいた。

夢の中で倉本に何度も抱かれ、躰は疼き続ける。

あの夜の口づけを思い出し、強く押し付けられた猛りを思い出し、沙織の心と躰は狂おしい程倉本を求めていた。




隣で寝ている夫の寝息を聞きながら、指先を疼く蜜口に忍ばせる。

切ない熱さの中にのめり込ませ、ゆっくりとかき混ぜる。


「…っ…ぅッ…」


口を塞ぎ声を堪え、沙織は夜毎、夫の横で倉本に抱かれた。



いつも涙が零れた。





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