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秘密
第4章 乱されて
慎一郎が出勤した後、沙織は二階のベランダで洗濯物を干していた。
「沙織さーん」
庭の方から咲子の声がする。
「はーい」
「ちょっと下りてきてー」
「はーい、今行きまーす」
珍しく大きな声を掛けられ、沙織は干しかけのタオルをカゴに戻し急いで階段を下りた。
「こっちこっち」
リビングに顔を出した沙織を咲子が手招きする。
「なんですか?」
「あれ見て…」
咲子がリビングから庭に出て左側を指差した。
「えっ…」
「あれって確かあなたが球根を埋めた場所じゃない?」
「…っ…、あ、そう、そうです…─」
雑草が少し生えているくらいで目立たなかった筈の場所が、今朝は鮮やかな赤に染まっている。
「………」
「彼岸花だったのね」
「彼岸花…」
高校へ通う電車の窓から、土手に沿ってたくさん咲いているその花を眺めた記憶はある。
でも間近で見るのは初めてだった。
「………」
沙織は庭に出て、埋めた通りに一例に並んで咲いている花の前に屈んだ。
真っ直ぐに目の高さまで伸びた茎には、葉も枝も節もなかった。
「沙織さーん」
庭の方から咲子の声がする。
「はーい」
「ちょっと下りてきてー」
「はーい、今行きまーす」
珍しく大きな声を掛けられ、沙織は干しかけのタオルをカゴに戻し急いで階段を下りた。
「こっちこっち」
リビングに顔を出した沙織を咲子が手招きする。
「なんですか?」
「あれ見て…」
咲子がリビングから庭に出て左側を指差した。
「えっ…」
「あれって確かあなたが球根を埋めた場所じゃない?」
「…っ…、あ、そう、そうです…─」
雑草が少し生えているくらいで目立たなかった筈の場所が、今朝は鮮やかな赤に染まっている。
「………」
「彼岸花だったのね」
「彼岸花…」
高校へ通う電車の窓から、土手に沿ってたくさん咲いているその花を眺めた記憶はある。
でも間近で見るのは初めてだった。
「………」
沙織は庭に出て、埋めた通りに一例に並んで咲いている花の前に屈んだ。
真っ直ぐに目の高さまで伸びた茎には、葉も枝も節もなかった。